第1回・後編「フィットネス業界で働き続けるのに大事なコト」芹澤宗一郎さん

フィットネス業界で働きたい。でも、どんなキャリアを描けるのか、自分にできるのか、不安もある——この企画では、フィットネス業界の第一線で活躍する人に、これまでの歩みや仕事へのやりがい、これからの目標を伺います。一人ひとりのリアルなキャリアストーリーが、あなたの一歩を踏み出すきっかけになりますように。(取材、執筆:大関まなみ)

スポーツクラブの社員として充実したキャリアを積みながらも、父の逝去を機に一度業界を離れた芹澤宗一郎(@soichiro_serizawa)さん。金融営業職の3年間を経て、再びフィットネスの道へ。前編では、その経緯を追いました。後編では、現在の仕事への向き合い方、レッスンで大切にしていること、そしてこの仕事で長く活躍し続けるためのヒントに迫ります。

前編はこちら

現在の仕事。フリーランスとして複数の軸を持つ

――現在はどのような形で活動していますか。

今はフリーランスのインストラクターとして、レズミルズの「BODYCOMBAT」、「BODYATTACK」、「BODYPUMP」、「GRIT」、「CORE」の5つのプログラムを週に11〜12本ほど行っています。他、パーソナルトレーニングや、自分で立ち上げたランニングのオンラインサポート、そしてモデルの仕事と、複数の軸で仕事をしている状況です。

――フリーランスの働き方はいかがですか。以前、朝から晩まで働いていた時と比べてどうでしょうか。

以前より時間はできました。ただ、金融の営業職では3年間、歩合制の世界にいたので、「時間があること」に若干の不安を感じてしまうんです(笑)。働けば働くほど収入が上がるという感覚が染み込んでいて、今の状況でもまだまだ動けるのではという気持ちがある。ただ、生活はしっかりできていますし、自分でコントロールできる時間が持てているのは、確かな変化だと思っています。

マンネリ化させない。その日の「テーマ」を決めてレッスンに挑む

――レッスンをするうえで、特に意識していることはありますか。

マンネリ化させない、ということをいちばん強く意識しています。スタジオレッスンというのは、毎週、同じプログラムを、同じ時間に、同じ場所で繰り返す仕事です。何も考えずにやっていると、必ず飽きが来る。気づいたら3年間まったく同じことをしていた、ということにもなりかねません。

――具体的にはどのような工夫を?

レッスン内容の変化はもちろんですが、それ以上に「気持ち」の部分に気をつけています。今日は初心者の方を見つけて声をかけよう、とか、とにかく笑わせに行こう、とか。何か1つテーマを決めてレッスンに臨むようにしています。「先週とは違う何かをする」というのが、自分の中でのルールになっています。

フィットネスの仕事を長く続けるために必要なものは?

――芹澤さんが思う、フィットネスの仕事の魅力とはどんなところですか。

この仕事って、必ず「楽しい」と思える仕事だと思うんですよ。スポーツクラブでアルバイトを始めた人が、気づいたらスタジオインストラクターになりたい、フリーランスになりたい、と思い始めることもすごく多い。レッスンをやればやるほど「もっとうまくなりたい」とか「もっとアイテムを増やそう」と思う。そういう磁力のある仕事だと感じます。

――一方で、辞めてしまう人も多いという現実もありますよね。

そうなんです。フリーランスに移る方もいれば、社員でいながら辞めてしまう方も多い。その理由は、大体2つだと思っています。人間関係と、給料面です。

どちらか一方が良ければ、もう一方が多少しんどくても続けられる。でも、どちらも行き詰まると、やめることになる。人間関係については自分がどうこうできる問題ではないけれど、給料面に関しては、工夫する余地は自分にも十分あると思っています。

一つの仕事を別の仕事につなげるアンテナを張り続ける

――実際に芹澤さんはどんな工夫をしていますか。

例えばレッスンの単価を上げることだけを考えるのではなくて、そこから派生した仕事を収入につなげていく、ということです。ランニングのオンラインサポートを自分で立ち上げたのも、モデルの仕事をしているのも、もともとは別の仕事からつながった縁です。

一つの仕事をそれだけで完結させるのではなく、それをきっかけに、ほかの何かとつながって、収入になる。そういうアンテナを立てておくことが、この仕事を長く続けるために大切なことだと思っています。

ランニングのオンラインサポートの他、芹澤さんのInstagramではランニングについての情報を発信中

「将来の目標」を持たない理由

――最後に、今後の目標について聞かせてください。

正直、これはすごく考えたんです。スポーツクラブでマスタートレーナーを目指していた時期、お金持ちになりたいと思っていた時期、レズミルズで指導力を高めたいと思っていた時期——それぞれのステージで、「将来の目標」は全然違うものでした。

その経験から、今はあえて大きな目標を作らないようにしています。将来のために生きるのではなく、今を充実させた先に、自然と豊かになっていくものだと思っているので。

プライベートでは一児のパパである芹澤さん

――では、今の自分の指針は何ですか。

1つだけ決めていることがあります。「去年の自分に勝つこと」です。年収も、技術も、人間性も。今年よりも来年のほうがいい状態でスタートできるように、毎日積み上げていく。そのループを繰り返すことが、今の自分にとって一番しっくりくる生き方だと思っています。

さっきの「レッスンをマンネリ化させない」という話にもつながってきますが、同じ給料で、同じことを3年繰り返すのでは、自分が目指している姿とは合わない。だからマンネリ化しないことが、自分への誠意でもあるんです。

やりたいことも、生み出したいものも、欲しい収入も、きっとそのときによって変わる。だからこそ、そのときの自分にとってベストな状態で次の年を迎えられるように——今もそれを考えながら、仕事をしています。

――「去年の自分に勝つ」。シンプルだけど、実は一番難しい目標かもしれません。遠回りをしてでも、本当にやりたいことに正直であり続けた芹澤さんだからこそ、説得力のある言葉でした。芹澤さん、貴重なお話をありがとうございました。

前編はこちら

取材、執筆:大関まなみ

取材ライター兼インストラクター。LES MILLS DANCEインストラクター、バーチャルボクシング®B級認定インストラクター。Instagram:manami_ohzeki

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